ストップ・リニア!訴訟 なぜ裁判を起こすのか

<訴訟までの経過>

 

2007年  JR東海が自社資金による中央新幹線(リニア新幹線)建設を表明

2010年  国土交通大臣が中央新幹線の事業認可につき交通政策審議会に諮問

2011年  交通政策審議会中央新幹線小委員会の答申を受け、国土交通大臣がJR東海を事業

      主体に指名。JR東海が環境影響配慮書、環境影響方法書を公表、予定ルートを3キロ

      幅で示す。沿線各都県や政令市の環境影響審議会で方法書の審査、住民の意見募集

2013年  JR東海が環境影響評価準備書公表、沿線各都県で環境影響評価審査会

2014年  準備書に対し各都県知事など沿線24自治体首長が意見書提出。意見書提出から僅か

      1カ月後にJR東海か環境影響評価書を公表。環境大臣意見などを経てJR東海が環境

      影響評価正書を公表

   8月   JR東海が「中央新幹線工事実施計画(その1)」を国交大臣に提出

  10月   国交大臣が工事実施計画を承認

  12月   リニア沿線住民を中心に5.048名が行政不服審査法に基づき、国交大臣の工事計画

      消しを求める異議申し立てを申請

2015年  リニア新幹線沿線住民ネットワークとして、工事計画承認取消しの行政訴訟の方針を確

      認。原告、サポーターの募集。JR東海がリ二ア品川駅、名古屋駅の工事の安全祈願祭

​      山梨県早川町で南アルプストンネル工事の着工式を行う

2016年

       5月20日 原告738名で東京地方裁判所に提訴

■なぜ裁判を起こしたのか

 JR東海は配慮書から評価書に至るアセスメントの過程で、沿線各地で100回以上の説明会を開催し、丁寧に住民に説明し理解を得られたとしていますが、生活環境や自然環境の保全対策が極めて不足しているとの自治体や住民からの意見や疑問・不安に対して、「十分な対策を取るので影響は無いか、ほとんど無い」など、あいまいな説明を繰り返すだけでした。JR東海の「住民の理解を得られなくてもリニアを実現する」という基本姿勢は変わらず、私たちは国交大臣あてに工事認可処分取消しの異議甲し立て申請を行いました。

 この申し立ては行政不服審査法に基づくものですが、リニア新幹線計画を後押しする国交省が審査を行うという住民にとっては不公平な内容であり、案の定、5千人余が申し立てたのに、これまで1年半あまり、審査された形跡がありません。

 一方、国交大臣から工事認可を得たJR東海は、リニア新幹線工事の着工を急ぎ、相次いで「安全祈願祭」や着工式を強行し、本橋工事への準備を進めています。このまま私たちの異議申し立てに対する国交省の裁決を待っていたら、JR東海によるリニア建設工事が進められてしまうということで、私たちは昨年秋に行政訴訟に踏み切る決断をしました。

 速度を優先するためだけの鉄道であり、国民の利便性につながらず、沿線の自然環境や住民生活にダメージを与えるリニア新幹線は不要不急の鉄道です。沿線での活動と訴訟の場でリ二ア新幹線の中止を訴えて行きます。

■訴訟の論点

1.争うこと

 JR東海は国交大臣に対して中央新幹線(東京~名古屋間)の工事実施計画の認可申請を平成26年8月26日に行いました。国交大臣は同年10月17日にこの実施計画を全国新幹線鉄道整備法に基づいて認可する処分を下しましたが、私たちの訴訟はこの処分の取り消しを求めるものです。国を相手に争う行政訴訟ですが、工事計画や認可処分の詳細を説明するために、JR東海も「補助参加人」として参加することになります。

2.原告適格の壁

 行政訴訟は原告になれる人を制限します。今回の訴訟で原告になる資格を有する者は、認可処分に対して異議申し立てを行った者ですが、訴訟で原告適格に制限が加えられることが予想されます。原告適格とは訴訟の処分を受ける当事者を指しますが、私たちはこの原告適格の範囲についても主張していきます。

①工事のために土地や家屋など財産権の被害を受ける人は当然原告になれます。立ち木トラストや土地トラストは原告を増やすことをねらったものです。

②工事車両の騒音、振動、排ガス、交通渋滞、そして高架による日照被害、飲用水源の枯渇、新幹線車両の騒音など生活被害を受ける人も原告になれます。

③原告を含めすべての人は、リニア新幹線に乗車した場合、安全な輸送が確保される法律上の利益があります。また、ユネスコエコパークでもある、南アルプスの自然を享受する権利ももっています。

 私たちは以上の3つの原告適格を主張します。個人の法律上の具体的利益とともに、国民一般が共有する利益も争われます。

3.全国新幹線鉄道整備法(全幹法)と鉄道事業法に違反する

 リニア中央新幹線は全幹法で認可されました。しかし、全幹法では、目的として、「新幹線鉄道による全国的な鉄道網の整備を図り、もって国民経済の発展及び国民生活領域の拡大並びに地域の振興に利すること(第1条)」、そして、路線の条件として、「全国的な幹線鉄道網を形成するにたるもの(3条)」、「全国の中核都市を有機的、効率的に連結するもの(3条)」と規定しています。私たちは、ただ速度が早いだけでネットワーク性に欠けるリニア新幹線が、いかにこの全幹法の目的から離れ、路線の条件を満たしていないかを明らかにしていきます。

 そして鉄道事業法では、事業の許可基準(5条1項)として、「その事業の計画が経営上適切であること」、「その事業の計画が輸送の安全上適切であること」、「事業の遂行上適切な計画を有するものであること」などが規定されています。私たちは、リニア新幹線の認可に際して、全幹法ではなく、この鉄道事業法が適用されるべきであると主張します。「リニアは絶対にペイしない(2013.JR東海社長)」とJR東海自らの発言がありました。また無数の断層が走り地震の巣となる南アルプスをトンネルで通過するリニア新幹線は地震が起こった時の安全対策に大きな不安が残ります。私たちは、リニア新幹線の事業が、いかに経営の適切性と輸送の安全性に欠けているのかを明らかにしていきます。

4.環境影響評価法に違反する

 環境影響評価とは、環境の保全を図るため、①開発計画を決定する前に、環境への影響を事

前に調査・予測し、②複数案を検討し、③その情報を公表し、公衆の意見表明の機会を与え、④これらの結果を許認可に反映させるプロセスのことです。JR東海は2011年6月に環境影響評価配慮書を公表して以来、たった3年余りで環境影響評価を完了したことにしていますが、多くは文献調査で終始し、実地調査の裏付けに乏しく、結果のほとんどに「影響は小さい」、「事後調査を行う」などの文言が羅列されています。住民への情報開示は不十分で、途中で出された知事意見や住民意見で示された懸念に対する配慮も無く、最後まで環境保全措置に具体性を欠いたままでした。

 特にトンネル掘削にともなう膨大な発生残土をどこへ持っていくのかほとんど明らかにせず、また地下水への影響も軽視し、その保全を確保する姿勢を示していません。またリニアルートの7分の1を占める山梨実験線の延伸工事の環境影響評価をしていないことにも問題があります。私たちは、JR東海が行った環境影響評価が杜撰であり、その内容に不備があること、評価のプロセスを適切に踏まなかったことを明らかにしていきます。

 環境影響評価法33条では、事業が環境の保全について適切な配慮を行っているかどうかを審査しなければならないとあります。この審査も事業認可の大切な要件になるはずです。JR東海の行った環境影響評価が不十分ならば、国交省の認可は違法であると私たちは主張します。

5.環境影響評価をめぐる各論

 以下について、その問題点を明らかにし、環境への配慮が不十分であることを主張していきます。

 ①地下水脈の破壊(沿線全都県にあてはまること)

 ②建設発生残土の処理が未定(運搬ルート、処分方法、処分先)

 ③工事車両、建設機械による騒音、振動、渋滞、大気への影響の過小評価(沿線全都県にあ

  てはまること)

 ④自然環境の破壊、生態系の破壊(沿線全都県にあてはまること)

 ⑤併用に伴う開口部の騒音、振動、微気圧波、低周波による健康被害(沿線全都県にあては

  まること)

 ⑥磁界の人体への影響

 ⑦高架部分の日照被害(山梨、岐阜などで)

 ⑧景観の破壊(山梨、神奈川などで)